顔を伏せて泣いた。だけど、残酷な時間。 3-3.→ 4.

3-3.顔を伏せて泣いた。

「……ごめん。やっぱり、泣いていい?」
「……うん。」

 アンは、顔を伏せて泣いた。声を押し【略】いるのは、人目があるからだろう。僕も我慢していたけど、我慢できなくなって、泣いた。顔を伏して、声を押し【略】。


4.だけど、残酷な時間。

 一時間も経っていないと思う。それでも、すごく長い時間に感じたのは、沢山泣いたからだろうか。ともかく、僕らは帰ることにした。何も解決してないから、ともかく、だ。公園の出口に向かう途中、アンがふいに足を止めた。見ると花束が置かれていた。ここで何かがあったのか?それはすぐに分かった。芝生が二畳分くらい焼け焦げていた。ここでかつて再殺が行われたんだ。目の前に急に広がったリアルが、僕らを足元から包み込んでいった。それでもまだリアルじゃないのか、脳が痺れてしまったのか何も感じなかった。心が停止した。だけどきっと顔の色は青かったのだと思う。アンの顔を見る余裕はなかった。

 公園からどのように家に帰ってきたかは覚えていない。その日、僕とアンは一緒に寝た。いままでも一緒に寝ていたけど、その日は特別だった。僕は彼女を抱きしめた。アンも僕を抱きしめた。甘い時間。甘い香り。だけど、残酷な時間。アンの匂いは僕の間脳を刺激して、それが【略】の時間、夫婦になろうとする時間の起爆剤によくなっていたのだけど、【略】。

 【略】、多くの場合、男が、僕が、【略】、時間的には二十分にも満たない時もあるけどそれでも未来を、前向きな行為だったのだと、その時に初めて分かった。もしもこんなことが起きなかったら、四十六歳くらいになって自然としなくなり、その後はもう二度と気付かなかったのかも知れない。前向きさに。気付きたくなかった。僕は泣き、ただただアンを抱きしめた。アンも僕を抱きしめた。甘い匂い。汗に含まれる成分だろうか。僕の大好きな匂い。【略】。

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