試し読み終了・目が覚めると冷たい汗を。ありふれた名字だった。 8-2.→9.

8-2.目が覚めると冷たい汗を。

ギュルル……と少し跳ね、服を削った後に、鎖骨のあたりに納まった。これから力を込め、押し進めていけばアンが切断される。少し力を込めると人間の身体は以外と硬い。カップで売っているカキ氷に金属製のスプーンを押し付けるような、そういう感触が手に伝わった。アンに直接触れた訳じゃあないけど、体温が失われた身体は冷たく、そして硬い。ドッドッド……振動は僕の腕とアンの身体に伝わっていく。


 ……目が覚めると冷たい汗をかいていた。夢、か。図書館で調べて知ったことが、夢の中で他の情報と再統合されて映像になったのだろう。どこかゲーム的に思えるのは、ゲームの記憶が引っ張り出されたのかも知れない。隣を見ると、アンはもう目を覚ましていて天井の方を見ていた。その目から涙がつうっと流れた。僕の夢を見られたのじゃないか?と不安な気持ちになるが、夢ってそういうものじゃないことにすぐに気付く。アンも同じような夢を見ていたのかも知れない。だけど僕はそれを聞けなかった。


9.ありふれた名字だった。

「愛は地球を救うって言うけど、俺はなんかあの言葉は嫌いだったな。悪い言葉じゃないよ。でも愛が地球を救うなら、何が地球をダメにしているのか?憎しみか?何かね、そこらへんをハッキリさせないで、愛を万能薬、魔法みたいに扱うのって、ちょっと違うと思うんだよねぇ。」

 大学の時の友人か誰かがこんなことを言っていたと思う。



これにて試し読みは終了です。続きは、『劇団ヤルキメデス超外伝』のナカノ実験室が小冊子という形で販売しております。なんらかの形でご連絡頂ければ、販売することもできるかも知れません。また、電子版の販売なども検討しております。

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