赤い血が青い血に変化する。告知 2-2.→3.

2-2.赤い血が青い血に変化する。

 ゾンビという表現がしっくりくるのは、花嫁達は不死とも言える生命力を持っており、【略】で撃とうが刀で腕を切り飛ばそうが、生きて動く。切り飛ばされた腕も動いている。完全に【略】しまうには、花嫁の身体を一六五以上に分割し、その後にウイルスの飛散を少しでも防ぐために、焼却しなければならない。一六五という数字に意味があるか分からない。ただ「バラバラにする」という曖昧な表現よりは確実性が増すはずだ。『火葬』ではなく『焼却』と、表現されるのは、その場で乱雑に燃やされてしまうからだ。弔う気持ちがあっても、その行為に『葬』という文字は相応しくない。

 花嫁がゾンビになると血の色が変わる。それは、彼女らの身体を分割する時に嫌というほど分かるのだが、赤い血が青い血に変化することから、この奇病には『マリッジ・ブルー』という名前がついた。面白くもなんともない。科学者のボキャブラリーの貧しさが分かる。だけど世の中に、そのような奇病、命に関わる奇病、人生を大きく狂わす奇病が存在していても、自分の身に起こってみないと実感がわかないもので、自分が関わってもすぐには実感、リアリティーを感じなかった。僕の彼女、恋人、内縁の妻にはならない同居人、婚約者、フィアンセ、色んな言葉で言い表すことができる僕の彼女、アンがその奇病に罹ったと聞いても、何が起きたのか分からなかった。婚姻届と結婚式はどちらが先か……そんなことを考えていたのに。


3.告知

「マリッジ・ブルーに感染しています。」

 医者はそう短く言い。何枚かの書類とチェーン・ソウを僕に手渡した。なんのことだか分からなかった。これで、一体、何を……。

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