自分が子どもだった頃を思い出してみる。 3-1.

3-1.自分が子どもだった頃を思い出してみる。

「ご本人じゃあなくても、役場に依頼することもできます。」

 役場。花嫁再殺課。その名の通り。マリッジ・ブルーが発見され、しばらくして設立された課。することはそのまま課名の通り。ゾンビとなった花嫁を再び【略】。書類とチェーン・ソウが収まったギターケースのようなモノを手渡され、しばらく放心していたのだけど、看護婦に促され廊下へと出される。告知、という手続き。聞かされたことが理解できず、頭の中で反射し続けているようだった。僕が診察室から出ると、アンは静かに微笑みかけてくれた。辛いのは彼女の方なのに、その優しさが嬉しかった。後、悲しい気持ちになった。まだ午後の三時頃で、暖かいと寒いの中間の寒い寄りの穏やか気温。診察室を出たのが夜だったら、家に帰って、その日は終っただろう。だけどまだ一日の残りが長い。

 楽しそうな子ども達の声。わぁわぁと何かを追いかけている。ボール。僕とアンは家の近くの公園にいた。誰かがボールを投げ、皆で追いかけ、誰かが拾うと、また投げて追いかける。特にゲーム性もなくて同じことの繰り返し。面白いのだろうか?自分が子どもだった頃を思い出してみる。繰り返しの中にも、例えばボールの弾み方が違うとか、石にぶつかって変な方向に跳ねるとか、効果があったのかどうかは分からないけど、皆が追いつくまでギリギリまでボールを投げるのをじらしてみたり……かけひき?のようなモノがあったように思える。子どもの頃はともかく身体を動かすことは「良いこと」だった。とにかく動く。あのパワーはどこから来ていたのだろうか?ボーっとそんなことを考えて、ふと見やると、子ども達はもういなくなっていた。

「ねぇ?」

 沈黙を破ったのはアンの方だった。

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