同郷で同級生のお二人でしたから。 6-1.

6-1.同郷で同級生のお二人でしたから。

 ……気を使われたのか、言葉の最後の辺り『三人』の後の間には、どういう意味があったのだろうか。適切な、当たり障りのない言葉を探したけど見つからなかった感じだろうか。『患者』じゃあダメだったのだろうか。それとも死が確定している者には、『患者』は相応しくないのだろうか。死というにはあまりに奇妙な病気。『患者』と言うには病の方が奇病すぎるのかも知れない。

「その三人の人々は別れの時まで、どう過ごされたのですか?」
 僕は『別れ』という言葉を選んでいた。
「三人、この場合は三組とも言えますが。一人の方は私の最初の患者でしたが、パートナーの方と最期まで過ごされました。同郷で同級生のお二人でしたから、最期の時間は故郷で過ごされたそうです。」

 なるほど、そういう選択もあるのか……いや、それが一番優しい選択なのだろう。もしも二人を別つ原因がマリッジ・ブルーであってもなくても、多くの人がそうするのじゃあないだろうか?人は誰しも最後には死ぬ。だから最期に優しい時間を過ごす。だけど変な言い方だが、僕らがもっと若くなかったら、きっとそうしただろう。

「もう一人の方、いえ、もう一組の方は失踪されました。」
「失踪?」
「ええ。それが二人一緒だったのか、それとも別々だったのかは分かりませんが、行き先を誰にも告げられず行方不明に……。」

 花嫁がゾンビと化した後は、速やかに再殺しないと二次被害の危険がある。だから感染後に行方をくらませるのは限りなく難しいのだが……。

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